紳士服のEC事業/リアルに近いサービスで顧客獲得/電話相談、仮想試着、クーポン券など

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紳士服業界では、ECと実店舗の連動を目指し、ECサイトのサービス拡充が進んでいる。「洋服の青山」を運営する青山商事は、顧客の相談に応じるコールセンターを設置して、実店舗のような顧客対応を提供している。ユニクロは16年1月から、実店舗で採寸したデータに基づきECサイトで注文できるセミオーダージャケットの販売を開始している。ECをよりリアルに近づけることで、実店舗との相互利用を促す狙いがあり、各社は顧客の囲い込みにもつなげたい考えだ。

電話で相談に対応
 青山商事は、15年1月に発表した中期経営計画においてオムニチャネルの推進による売り上げ拡大を掲げた。
 ECを実店舗により近づけるための施策として15年4月に当日発送、同年10月にコンシェルジュサービスを開始した。商品の当日発送は早ければ翌日に商品が届く。依頼があれば、自社の物流センターでスーツを裾上げして発送している。
 コンシェルジュサービスの一環として、電話で顧客の相談に応じている。店舗での接客経験を持つスタッフがスーツ選びや着こなしのアドバイス、サイトの使い方などについて年中無休で対応する。買い物前の疑問や相談に応えることで、「ネットでありながら人を意識してもらい、洋服の青山らしさを訴求していきたい」(青山商事・石矢浩EC事業部部長)と言う。
 ECと実店舗の相互利用を促すため、店舗で商品購入した人には、ネットで利用できる割引券を配布している。14年に試験導入し、昨年から本格的に開始した。
 ECを利用する顧客ほど店舗の利用回数も多い傾向にあるため、「店舗だけを利用している顧客にECの利用を促すことで、店舗の利用回数もさらに高まる」(同)とみている。
 割引券を利用してサイトで買い物をした顧客の売り上げは、配布した販売員の個人売り上げにカウントされ、人事評価の対象になっている。
 これまでは、ECに顧客が流れると店舗の売り上げが落ちるため、店舗の販売員には反発もあった。割引券を個人評価の対象にすることでこうした反発を解消した。「EC利用の多い顧客ほど店舗への来店頻度も高いというデータを見せて社員を教育し、理解を得ている」(同)と話す。

(続きは日本ネット経済新聞 3月10日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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