アパレルメーカー大手のEC売上高が拡大している。15年7月から9月に本決算や中間決算を迎えた企業のEC売上高は軒並み2桁増収だった。各社は消費行動の変化を受けてECの商品供給体制を強化しているほか、オムニチャネルを見据え、店舗とECサイトの会員情報を統合するなどデジタルシフトを推し進めている。
「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングを筆頭に、ベイクルーズグループ、アダストリア、ユナイテッドアローズ、オンワード樫山が前期比または前年同期比で2桁増収だった。
増収率が前年同期比4・1%増にとどまったTSIホールディングスも、全社売上高が減収だったことを踏まえればECの好調ぶりが目立つ。
ファッションアイテムをECサイトで購入する消費者が増える中、アパレル各社はECの商品供給体制を強化して売り上げを伸ばしてきた。
例えばユナイテッドアローズは、あらかじめ確保したECの在庫が薄くなった際、実店舗の在庫をECに振り替えるなどフレキシブルに運用している。
ベイクルーズは約2年前、「ゾゾタウン」以外のECサイトの在庫情報を一元化し、在庫の引き当てを適正化することで機会損失を低減した。
各社はオムニチャネルを見据え、店舗とECのポイント統合や在庫連携、顧客IDの統合なども順次進めている。スマートフォンからの試着予約や店頭取り置きサービスも広がり始めた。
将来は顧客の属性や購買履歴、行動履歴などをECと店舗で統合して分析し、顧客ごとにメルマガを出し分けたり、ECサイトの表示内容を変えたりするワン・トゥ・ワン・マーケティングを計画している。
アパレル大手がデジタルシフトを加速している背景には、「円安で仕入れコストが上昇したため、店舗よりも販売コストを抑えられるネット通販にシフトしている」(アパレル大手のEC事業責任者)という事情もある。
「アパレル業界は現在、業態転換の過渡期」(同)にあり、各社はデジタルシフトのための社内体制の変革や設備投資を継続する見通し。
14年時点で約1兆3000億円とされるアパレルEC市場は当面、拡大が続きそうだ。
〈アパレル大手のEC〉 軒並み2桁増収/デジタルシフトが加速
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