全国の自治体/名産品ECの動き活発/低価格だけで苦戦の例も

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全国の自治体で、名産品をネット通販展開する動きが強まっている。政府が推進する地方創生施策の「地域住民生活等緊急支援のための交付金」を使い、ECサイトで割引きした名産品を販売している。各自治体では販路を全国拡大する機会と意気込んでいるが、ECのノウハウを持たないところでは、苦戦している例も目立つ。

交付金で3割引き

 自治体によるECの取り組みは、「地域住民生活等緊急支援のための交付金」が充てられている。地方創生施策は、額面から1~2割ほど上乗せして自治体内で利用できるプレミアム付商品券が話題となっているが、ECサイトで「ふるさと名物商品」を販売することも政府は促している。
 「ふるさと名物商品」は、選定した特産品を一般的な小売価格から3割以上の値引きをして販売する。値引き額は交付金で補い、事業者に支払われる仕組みだ。
 自治体が募集し販売しているのは自治体内で加工、製造している商品。地元では有名でも全国的には知名度が低い商品が多く、ECサイトで販売して地域外の販路拡大につなげる。名産品で自治体の知名度を高め、観光客を呼び寄せる目的もある。
 サイトの運営方法は自治体ごとに異なり、特設サイトを開設したり、商工会議所などに委託しているケースなどがある。
 比較的多くの出店者を集めているのは、全国商工会連合会(所在地東京都、石澤義文代表)の運営する「ニッポンセレクト.com」だ。6月に「ふるさと名産商品」専門の特設サイトを開設して、現在までに14道県が参加している。商品数は1000品目を超えて、商品数はさらに伸びるとみている。

知名度の低さで不振

 自治体によるECサイトの運営は過去にも事例があるが、成功しているとは言い難い。
 佐賀県武雄市が中心となって展開するサイト「自治体特選ストア」は一時期、22の自治体が参加していたが、現在は13の自治体に減少している。
 サイトを運用する自治体特選ストア運営協議会(所在地佐賀県)では減少の理由について、ECからふるさと納税へ事業転換する自治体が増えたことや、当初から期間限定で出店していた自治体があったためと説明する。今後は「サイトへの導線を増やし、商品選定を強化する」(商工流通課)ことで、立て直しを図る。
 「ふるさと名物商品」を販売するある県では「年間1億円の売り上げを見込んでいたが、現在まで約150万円の売り上げ」と実情を話す。知名度向上のために宣伝を強化する必要があるとしている。
 「ふるさと名物商品」は、交付金が終了する15年度末までの事業。割引きだけに頼らない短期的に効果のある取り組みが求められそうだ。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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