消費生活センターへの定期購入に関する相談急増について取材を進めると、サプリメントを販売する通販サイト「うるおいの里」を運営するモイスト(本社東京都、池田英子社長)の名前が挙がった。同社はアフィリエイト広告などを活用した販促施策が当たり、一気に顧客が急増した。表示の分かりにくさもあり、顧客からの問い合わせが集中してコールセンターはパンク。電話がつながらない状態が続いたため、問い合わせた顧客の不満が増加し、消費生活センターへの相談数が増えたようだ。モイストをはじめとした定期購入型通販サイトの表示自体の問題点についても探る。
国民生活センターの「PIO―NET(パイオネット=全国消費生活情報ネットワーク)」を活用し、「モイスト」や「うるおいの里」に関する消費者センターへの相談件数を調べた結果、15年度に1347件の相談が寄せられていたことが分かった。特に今年2月ごろから相談件数は増加しており、4月には1カ月間で1169件もの相談があった。
モイストは「うるおいの里」において「30日分が実質無料(送料相当500円分だけ顧客が負担)」とうたい、最低4カ月間の継続契約が条件であるサプリメントの定期購入を促していた。
「1カ月間サプリを無料で試せるのか」と思い込み、定期購入と分からずに申し込んだ顧客も多かったようだ。
モイストは当社の取材依頼に対し、「取材には対応しない」と拒否している。
■顧客対応追いつかず
モイストと関係の深いA氏は、「今年に入り注文数が急増したことにより、購入者からの問い合わせや解約の電話への対応が追いつかない状態になったようだ」と話す。
同社はアフィリエイト広告を活用することにより、爆発的に注文数が増えたという。モイストの15年9月期の売上高は本紙推定で65億円ほどだったが、今年5月には月商10億円を超える規模になったという。
モイストは電話でしか解約を受け付けておらず、サイト内の契約条項をよく確認せずに申し込んだ購入者からの電話による問い合わせが急増した。電話がつながらない状態が続いたため、不安に思った消費者が消費生活センターに相談を持ち込んだとみられる。
「モイストは自社システムを採用しているため、外注先を活用してコールセンターの体制を強化することができなかった。社内でスタッフを採用・教育するにも、実際に稼働できるまで2カ月はかかるため、電話がつながりにくい状態をすぐに解消できなかったようだ」(A氏)と話す。
実際に「モイスト」や「うるおいの里」に関する相談件数は4月をピークに減少に転じている。コールセンターの体制を強化したことにより、電話がつながりにくい状態は解消されつつあるようだ。
■分かりやすく表示改善
そもそもモイストのような定期購入型通販サイトの表示内容に問題はなかったのか。
公益社団法人日本通信販売協会(JADMA)で調査役を務める地主園彰治氏は、「分かりにくい表示で購入を促すと景品表示法の有利誤認や優良誤認に該当する可能性がある」と話す。
かつて景表法を所管していた公正取引員会は08年6月、「表示に対する実態調査」に基づき適正な表示に対する考え方を紹介している。
その考え方では、「初回無料」などを強調して表示する場合、付随する制約条件などを、(1)強調表示に近接した箇所(2)最低でも8ポイント以上の文字(3)背景の色との対照性ーーーなどに留意して表示すべきだとしている。
「うるおいの里」では、「30日分が無料」などの特典のすぐ下に「2カ月目以降の契約条件」が明記されている。文字のポイント数なども問題なさそうだ。
「以前は箇条書きで契約条件を記載していたが、分かりにくいとの声から表示方法を変えた」(A氏)と言う。表示方法を改善することで「分かりにくさ」を解消しようとしている。
さらに、通販サイトのトップ画面には、「コールセンターが混み合ってつながりにくい状態に関して」と題して、電話がつながりにくい時間帯なども明示している。「電話がつながらない」という顧客の不安を減らすための努力はしていたようだ。こうした取り組みが相談件数の減少につながったと見てとれる。
■若年層の増加に対応も
モイスト以外にも定期購入型通販でトラブルが生じるケースは増えている。中には「お試し」という表記がありながら定期購入になっているサイトもある。
若年層をターゲットにした通販サイトも増えており、通販に不慣れで契約条件などをきちんと確認していないケースや、スマホの小さい画面でサイトを見ているため契約条件を見落としたというケースもあるという。
通販業界は顧客の裾野の広がりや端末の変化も踏まえて、対策を練る必要がありそうだ。
(つづく)
【真相追跡 <定期販売トラブル>】<第2回> 電話不通で顧客の不満が増加
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