【中国越境EC キリン堂の挑戦】<連載3>2年目の「独身の日」大台突破目前の決断

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 ドラッグストアチェーンのキリン堂は昨年11月、越境EC2年目の大一番である「独身の日セール」を迎えた。1年目の経験を生かし、入念な準備を重ね、前年を上回る売り上げを計画。幾多のトラブルに巻き込まれながらも、予約販売は好調に推移した。その段階で前年の2倍以上となる3億8000万円の売り上げを達成できる見込みはついたという。ただ、キリン堂の新事業開発部・通販ネットビジネス部長の伊藤雄喜氏はどうしても4億円の大台を突破したかった。そんなときに同社が出店している中国の越境ECモール「天猫国際(Tモールグローバル)」から、売り上げ拡大につながるオファーが舞い込んできた。ただ、そのオファーは無理難題といっても過言ではないほどの内容だったという。

【独自商品企画を提案】
「天猫国際」が本格オープンしてから2年目に入り、国内外の競合店も増えました。そんな中、2年目の大一番である「独身の日セール」に向けて「当社の強みとは何か」を改めて考え、戦略を練りました。
 当社の強みは前回の独身の日セールを経験しているということです。メーカーさまには1年目の実績をもとに話を持っていき、事前に準備を進めることができました。実際に7月ごろからメーカーさまの元に伺い、「今年の独身の日は一緒に新しいチャレンジをしませんか」と提案させていただきました。
 1年目にも当社の越境ECにご理解いただいたジャパン ゲートウェイさまともう1社の強化ブランドを持つメーカーさまには、独身の日にキリン堂オリジナルの商品企画をお願いしました。オリジナル商品というのは、一般的な1個買ったら同じ商品をもう1個プレゼントするというようなセット企画ではなく、全く別の商品をセット販売する企画でした。メーカーさまが中国市場で次に売りたい商品をセットで付けることにより、中国における市場拡大を図りましょうというご提案をさせていただいたのです。
 同じ商品のセット販売という企画も悪くないのですが、結局は値下げ販売と同じですので、ブランドの価値を下げることになりかねません。もちろんセールですのでお得感を作ることは必要ですが、ただ安売りするのではなく、次を見据えたセット商品を企画することを提案したところメーカーさまにも賛同してもらえました。

【2社の賛同得て企画実現】

 「天猫国際」の担当者にもこのセット販売企画は評価してもらえました。オリジナルのセット商品は「天猫国際」にとっても他のモールでは売られていないため、差別化できる商品となるからです。
 ジャパン ゲートウェイさまには、1年目から売れ筋となっていたヘアケアブランド「レヴール」のシャンプー・トリートメントと、ボディーケアブランド「メルサボン」のハンドソープ・クレンジングシートのセット品を企画させていただきました。
 もう1社の強化ブランドを持つメーカーさまの商品では、シャンプー・トリートメントと、その詰め替え品をセットにさせていただきました。これには、中国にまだ根付いていない詰め替え文化を広めるという狙いもありました。
 この2社には、一緒に企画させていただいたセット品を、それぞれ5万セットずつ用意していただきました。さらに、このオリジナル企画以外にも、他のメーカーさまにご協力を仰ぐなど独身の日に向けた準備を進めました。

【商品配送で不測の事態】

 独身の日は11月11日ですが、セールの予約販売は1カ月前くらいから開始します。昨年の独身の日は暦の条件があまり良くなく、通常よりも早めに在庫を保税倉庫に納めなければなりませんでした。
 中国では10月頭に中国の建国を祝う国慶節というイベントがあり、その日は祝日になるため、その前に保税倉庫に商品を搬入する必要がありました。さらに、日本では9月後半にシルバーウィークの大型連休があり、その前には商品を出庫する必要があったのです。かなり早くから準備を進めたのですが、それでも計画していた在庫に少し届きませんでした。
 商品は予定通りに港を出ましたが、上海港に陸揚げする直前でストップさせられてしまいました。荷物の中に健康食品が入っていたため、「原産地証明や放射能チェックの証明書を提出しなさい」と言われてしまったのです。結局、貨物船は上海港で10日間ぐらい停留することとなってしまいました。セール前も決して順風満帆ではなかったのです。

(続きは「日本流通産業新聞」4月7日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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