【千原弁護士の法律Q&A】▼177▲ 購入金額も上限設定は必要か?

千原弁護士

 当社は、ネットワークビジネス(NB)を行っています。会員は、日本全国にいます。会員の中には、月に100万円分以上の商品を購入している個人もおり、社内では、「過量販売ではないか?」という声が出ています。この点、いかがでしょうか。また、月の購入金額に上限を設定することは必要ないでしょうか。さらに、どのように基準を作ったら良いでしょうか。(NB会社社長)

〈回答〉 NBは「過量販売規制」の対象ではないが…

 まず、過量販売への規制は、「訪問販売」が対象となり、ネットワークビジネス(連鎖販売取引)は、対象となっていません。この点、勘違いされている方が多いようですね。
 また、NBには「適合性の原則」(相手方の知識、経験および財産の状況に照らして不適当と認められる勧誘を行うこと)の禁止がありますが、こちらも「勧誘を行うこと」、つまり「リクルート時」の規制となっています。
 このように、NBには、特定商取引法において、入会した後の会員の取引金額の上限の規制はなく、基本的には自由ということになります。NBには、入会1年以内の会員について中途解約(90日ルール)が認められており、買いすぎた会員の救済が図れるという点も大きいのでしょう。
 とは言っても、会員さんを経済的に困窮させるような取引が、社会的に許されるわけはなく、万一、そのようなことがあれば、消費生活センターなど行政は、過量販売自体ではなく、当初のリクルートの内容などに問題点を見つけて、指導や処分をすると思います。
 NBの消費生活センターへのクレームは、行政処分例を見ると、リクルート時の問題に集中しています。しかし、実際には「たくさんお金をかけたが、結局、儲からなかった。なんとかお金を返してほしい」という動機によるケースがかなり多いと思います。
 従って、そのような動機を封じる意味でも、個人のお客さまについて、貴社が検討されているような、自主的な基準を設けられるのは、私も大賛成です。
 基準について、私から具体的な数字を示すことはできませんが、以下のような要素を考慮の上、貴社においてご判断いただければと思います。
 (1)当該購入に見合うコミッションが得られているか(得られていれば、100万円の購入でも、基本的には問題ないと思います)(2)会員の年齢(若年や高齢者の場合は基準を設ける)(3)会員の収入や資産(少なければ基準を設ける)(4)貴社に入会して活動されているキャリア(短期であれば基準を設ける)─などです。そのほかの点も含め、貴社において検討されることをお薦めします。


〈プロフィール〉
 1961年東京生まれ。85年司法試験合格。86年早稲田大学法学部卒業。88年に弁護士登録して、さくら共同法律事務所に入所し、94年より経営弁護士。現在、120を超える企業・団体の顧問弁護士を務める。会社法などの一般的な法分野に加え、特定商取引法・割賦販売法・知的財産法を専門分野とし、また、数多くの大規模企業再生・倒産事件を手掛けてきた。業界団体である全国直販流通協会の顧問を務める。著書に「こんなにおもしろい弁護士の仕事」Part1~2(中央経済社)などがある。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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