【ニュースの深層】□□56 〈支援会社主導の業界団体設立相次ぐ〉/通販・EC市場の新たな課題解決目指す

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新設団体の概要

新設団体の概要

通販・ECの支援会社が主導するかたちで、業界団体の設立が相次いでいる。通販に特化したCRM(顧客関係強化策)の団体、一般社団法人日本通販CRM協会(本部東京都、向徹・代表理事)は、今年6月から本格的に運営を開始。中小企業のネット販路開拓などを目的とした「一般社団法人中小・地方・成長企業のためのネット利活用による販路開拓協議会(略称ネッパン協議会)」も今年7月から会員の募集を開始した。支援会社主導の団体というととかく「自社に利益を誘導するための組織ではないか」と邪推されがちだ。ただ、両団体とも通販・EC市場の成長に伴い生じてきた新たな課題に対処するために立ち上げられた経緯があるという。

知識の差埋める

 日本通販CRM協会を主導しているのは、CRM支援システムを提供するE―Grant(本社東京都)の向徹社長だ。向社長は、同協会の代表理事を務めている。理事にはEC業界向けメディアを発行するRyo―MA(本社東京都)の小林亮介社長と、人材育成事業を行うシーピーユー(本社東京都)の米田哲朗社長が就任している。
 向社長は、「通販会社は今後、反響(レスポンス)だけを求める販促活動ではなく、顧客との関係(リレーション)を深めるためのCRMに取り組むことが消費者から求められる。そうした取り組みが広まれば、消費者にとっても快適なサービスになり、通販市場はさらに発展すると思う」と話す。
 通販業界にはすでに業界団体や自主的な勉強会が存在している。既存団体でもCRMについて学ぶ場はあるだろうが、「(日本通販CRM協会は)より体系的にCRMについて学べる。通販企業でもEC企業でも参加できる気軽さもある」(同)と話す。
 CRMを実行するためのツールも進化し、消費者のニーズも高まっているが、通販会社のCRMに対する”知識の差”は広がっているという。この差を埋め、各事業者が活躍できるように導くのが同協会の目的なのだ。


販促にも助成金を

 「ネッパン協議会」はネット広告代理店のオプトホールディング(HD)が主導して立ち上げた団体だ。同協議会の代表理事にはオプトHDの鉢嶺登社長が就任している。ヤフーのマーケティングソリューションカンパニー エリア・オンライン営業本部長を務める福山広樹氏や、慶應義塾大学総合政策学部教授の上山信一氏、ソウルドアウト代表取締役の萩原猛氏が、それぞれ理事に就いた。
 同協議会は中小企業が成長するために、ネットを活用した販路開拓・企業連携を支援することを目的としている。具体的な取り組みとしては、行政を巻き込んだ支援制度の確立を目指しているようだ。
 中小企業がサイトを構築する費用や、IT事業を推進するための人件費などを助成する制度はすでに存在する。ただ、サイトを立ち上げた後に、ネット販促を行う際の費用を助成する制度はほとんどないという。
 現在では、ホームページやECサイトは安価に開設できるようになった。同協議会は、事業を飛躍させるためには、ネット集客などのマーケティング活動の支援が必要だと考えているのだ。
 そのために、同協議会では行政に対して、ネット販促に対する助成金制度を新設するよう働きかけを行うという。さらに、ネット販促のノウハウを提供する動画セミナーを配信したり、中小企業向けの相談窓口を設けたりもする予定だ。
 通販・EC市場の環境が変化していく中で、新たな課題が生じている。団体を立ち上げた支援会社は、専門分野に特化した事業を展開しているため、そうした課題をいち早く察知し、行動を起こしたのだ。新設団体の取り組みに賛同する通販・EC会社も増えているという。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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