【ニュースの深層】□□76 個人情報保護法/NB・訪販業界は負担増

 17年5月30日に改正される個人情報保護法によって、個人を特定しない情報の活用が可能になり、通販業界にとってはメリットが生まれる期待もある。一方、ネットワークビジネス(NB)企業や、名簿業者から顧客情報を入手していた訪販企業にとっては、第三者提供時の記録義務などが生じて、負担が増える側面もある。改正個人情報保護法の通販・訪販業界への影響を探った。


■通販業界への影響
 
 (公社)日本通信販売協会(JADMA、事務局東京都、阿部嘉文会長)の万場徹専務理事は今回の改正について、「改正法による通販事業者の負担増はほとんどないのではないか」としている。ただ近年、ECサイトへのサイバー攻撃が多発しており個人情報の漏洩などの案件が急増していることから、「セキュリティー対策の強化については、事業者にとって急務だ」(同)とも話している。
 改正法では、個人情報の安全管理について、「必要のなくなった情報の消去」などを、努力義務として規定している。
 データの利活用については、個人を特定できないように加工したPOSデータ(購買記録)の有効利用などが想定されている。
 改正法では、特定の個人を識別できないように加工した情報(匿名加工情報)の取り扱いについて、通常の個人情報に比べて、より柔軟な利活用が行える旨を定めており、新サービスの創出や商品開発などに役立つことが期待されている。
 通販会社の顧客データ分析などを行うA社の代表は、匿名加工情報の応用の可能性について、「将来的には、いくつかの通販会社の顧客の情報から、商品購入に至った顧客の年齢や地域、購入の時間帯を分析し、参考データとしてクライアントと共有することも考えている」「アウトバウンドコールを行う通販会社には、何時に電話を掛ければ顧客が家にいる可能性が高いのかといったことが分かるようなデータも提供したい」などと話している。
 Web接客システムを提供するB社は、「当社では、ECサイトからプッシュ通知を会員顧客に送るシステムを提供しているが、新制度を活用すれば、ユーザーがECサイトを訪問した時間帯や滞在時間のデータを基に、サイト訪問につながりやすい時間帯を選んでプッシュ通知を送ることも可能になると考えている」と話している。


■訪販業界への影響

 訪販業界では、ネットワークビジネス(NB)の主宰企業や、テレアポによる販売を行う事業者の負担が増加することが懸念されている。
 現行法でも、第三者に個人情報を提供する際は、原則本人の同意が必要だ。つまり、NBの主宰企業が、下位の会員の購入履歴や入退会の情報を、上位の会員に公開する際には、原則下位の会員の同意が必要となっている。
 加えて改正法では、個人情報を第三者に提供する際に、提供する側と受ける側の両方に、受領者と提供者の氏名や日時等を記録し一定期間保管する義務が発生することになる。
 NBの主宰企業が、下位の会員の情報を上位の会員に公開する際も同様。主宰企業に記録の必要性が生じるのはもちろん、上位の会員も、情報提供を受けた旨の記録を行う必要性が出てくる。
 これは改正法の施行後に適用されるもので、5月30日以前の情報のやり取りに関して記録を保管しておく義務はない。
 第三者に情報を提供する際に逐一本人の同意を得るのは、事業者にとって負担だ。そこで現行の個人情報保護法では、本人の同意を得たものとして認める「オプトアウト手続き」の規定を設けている。
 本人の個人情報を第三者に提供することについて、契約書類などで事前に通知し、本人が、自分の情報が誰の手に渡っているか認識できる状態にすれば、本人が個人情報の提供に同意したものとみなすことができるというものだ。オプトアウト手続きを行えば、第三者に情報を提供することも可能になる。
 改正法ではこのオプトアウト手続きについても、厳格化することを定めている。従来は、ウェブサイト上のプライバシーポリシーのページなどに、個人の情報を第三者に提供する旨を明記する程度でもよかったが、改正法では、個人情報保護委員会に、オプトアウト手続きを行う旨の届け出を行うことを求めている。NB主宰企業が会員の同意を得ずに上位の会員に情報提供するためには、個人情報保護委員会への届け出が必要ということになる。
 「第三者提供する際の記録の管理」や「委員会への届け出」といった規定により、傘下会員情報を上位会員に提供するサービスを行っているNB主宰企業は大きく影響を受けそうだ。
 名簿業者から名簿を購入して顧客リストを作成することもある一部のテレアポなどの訪販事業者にとっても、負担は大きいものとなることが懸念される。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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