【「機能性表示食品制度」最新解説】〈「抗加齢協会の新制度セミナー」 大阪大学大学院・森下竜一教授の講演要旨〉/機能性表示はトクホの表現が参考になる

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講演する森下竜一教授

講演する森下竜一教授

機能性表示食品制度では「免疫」の扱いについて、大きな争点になっていた。消費者庁食品表示企画課塩澤信良食品企画官は3月19日に都内で開催された説明会において、免疫についての見解を説明。「ガイドライン案では、表現できないものの一例として(免疫関連の表示を)示しているが『免疫』の機能性表示が全てダメと言っているわけではない」とした。この点について、大阪大学大学院の森下竜一教授は本紙取材に対して「例えばヒト臨床試験でNK細胞が活性化されたというデータがあれば、『NK細胞が活性化される』とは書ける。ただ、そのデータをもって『免疫機能が維持される』とは書けないだろう」との見方を示した。森下教授は3月23日、抗加齢協会が都内で開催した新制度に関するセミナーでも「免疫」の扱いについて言及している。当日の講演要旨は以下の通り。

 3月2日には新制度の「ガイドライン案」が公表されました。この案では、サプリメントの定義が示されました。公式な文書の中で初めて「サプリメント」の文字が登場したのです。
 今回の制度では、トクホの範囲の表示は可能ということになっているので、機能性表示の表現の仕方を考えるにあたって、トクホの表現が大きな参考になると思います。逆に言えば、トクホでできないことは難しいということでもあります。
 事業者の皆さんが一番気にされている点が表現の仕方だと思います。表示に疾病名を含まなければいいという考え方もグレーゾーンだということを念頭に置いていた方がいいと思います。例えば「○〇が高めの方に」など疾病名を表現していなくても、その後に続く機能性の表現の仕方によっては、文章全体を読んだ際に疾病リスク低減表示と誤認される恐れがあります。こういった表示はNG表現ととらえるべきということです。
 新制度では、肉体改造にあたる表現はNGとしています。つまり「筋肉ムキムキ」や「痩せる」も肉体改造に入ります。
 よく質問があるところでいきますと、「アンチエイジ」も難しいと考えられます。言葉そのものがダメと言うことではなく、エビデンスと表示したい表現を科学的に結び付けて説明することが難しいのではないかということです。「アンチエイジング」に関する機能性表示をしたいということは、「老化を抑える」とうたいたいということになると思いますが、「老化」には指標がありません。ですので、例えば、「肌の老化の指標や、酸化の指標が抑えられたから老化を抑えられる」というのは科学的に説明ができないということです。
 近いところでいきますと、「免疫」についてもよく質問を受けます。消費者庁の塩澤氏の口からも説明会などで何度も言及されていますが、「免疫機能を維持する」の表現は不可能とは言っていません。ガイドライン案で認められない表現例として示されているのは、「限られた免疫指標であたかも体全体の免疫に関する機能を持つと誤解されるもの」や、「試験管試験や動物試験だけで、生体への作用がわからないもの」です。生体への作用を科学的に証明すればいいということになります。
 補足をすると、例えばよく質問される内容に「NK細胞の活性化」や「インターロイキン6の活性化」で「免疫の機能維持」をうたえるかというものがあります。答えはNGです。「NK細胞の活性化」や「インターロイキン6の活性化」は免疫機能の維持には必ずしもつながりません。今回の制度では根拠となるエビデンスが表現につながるかが重要なのです。個々の言葉の意味ではなく、全体のストーリー性を総合的に判断しなくてはならないということです。
 「疾病の罹患」に関する考え方や扱いについても多くの人からご質問やご相談を頂きます。基本的に「症」という言葉が入るものは疾病と判断していただいて差支えないと思います。ただ、「不眠症」などについては程度によると考えるといいでしょう。睡眠薬を常飲しているような場合であれば「疾病に罹患している人」にあたるでしょうが、ごくまれに睡眠薬を使うといった程度で「疾病に罹患している人」にあたるかどうかは、医師の判断を仰ぐのがベターでしょう。
■掲載記事
・抗加齢協会の新制度セミナー
・NEWS ここが知りたい
など
(続きは日本流通産業新聞 3月26日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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