ECの利用が増加したことが宅配の再配達率の上昇につながっているとして、国土交通省は6月5日、「宅配の再配達の削減に向けた受取方法の多様化の促進等に関する検討会」を開催し、荷物の受け取り方法の改善に乗り出した。ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便の3社が実施した調査によると、再配達率は平均19・6%。再配達の増加は、宅配便の料金の値上げや宅配会社の労働力不足に拍車が掛かるなどの影響が懸念されている。国交省は今年8月までに3回の検討会を開き、荷物の受け取り方法の多様化に向けた指針を固める方針だ。
EC市場拡大で再配達率増加
国交省は再配達を減らすことを目的に検討会を設置。コンビニ受け取りやロッカー利用など受け取り方法を増やし、ドライバー不足の解消やCO2の削減を目指す。
検討会の委員には、ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便のほか、楽天、アマゾンジャパン、コンビニエンスストア事業者、ロッカー会社、業界団体が名を連ねた。
宅配会社3社が14年12月に実施した調査によると、2回以上の再配達率は19・6%となった。EC市場が09年から13年の5年間で約1・8倍に成長するなか、労働力不足が物流業界全体の課題となっている。これにより各社で配達便の料金が値上がりしており、通販、EC企業の経営に影響を与えている。
宅配の時間指定の利用は、05年~10年までの5年間で2倍以上に増加した。ただ、時間指定がある荷物の再配達率も17・0%で、全体水準と差はなかった。消費者が、指定をしたことを忘れている可能性も指摘された。
各社の取り組み統合を狙う
これらの状況を改善しようと、EC、宅配の両業界では、コンビニ受け取りやロッカー利用、1度目の受け取りでポイントが付与されるなどの施策が増えている(表参照)。
ヤマト運輸では早い時間帯の配達を加えたり、配達予定日や時間のメール通知、コンビニと提携した店頭受け取りなどに取り組んでいる。
楽天は14年5月に楽天市場の専用宅配ロッカー「楽天BOX」を駅などに設置。15年4月には都内の郵便局で、注文商品が受け取れる宅配ロッカー「はこぽす」を日本郵便と連携して設置している。
国交省や千趣会、佐川急便などは07年10月から、再配達することなく荷物を受け取ると、ポイントが付与される実証実験を行った。実験前は16・1%だった再配達率は11・8%に低下し、ポイント制度の導入が再配達の減少に一定の効果があると報告された。
さまざまな取り組みが行われているものの、各社の足並みはそろっていないため、国交省はサービスの統合を目指す。検討会では関連事業者らが参加できるサービスの構築が提案された。
一方で、問題解決に向けた不安要素もある。コンビニ事業者は、コンビニへ来店するきっかけが増えて店舗の売り上げにつながるが、オペレーションを整備しなければレジが混雑すると指摘する。
駅やマンションを中心に設置台数を増やしているロッカーは、消防法により設置できない場所や、自治体ごとに設置のルールが違うこともある。
今年7月には国交省が中心となり、再配達の利用者にアンケートを実施する予定。1回目の配達時間や時間指定の利用有無、受け取りができなった理由などの実態を把握していく。結果を踏まえ、現状に適した受け取り方法を検討するという。
検討会は全3回を予定する。国交省では「検討会で、方向性を打ち出す。プラットフォームが形成されたら、国交省の参画も検討する」としている。
国土交通省/再配達対策に動き出す/有効な受取方法を企業と検討
記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。