〈機能性表示食品制度〉 政府、4月1日施行を閣議決定/消費者庁「最速で5月末から流通開始」

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 「○○という成分には△△という機能があります」─4月1日から、企業の責任のもと個別審査なしで食品の機能性をうたうことができる「機能性表示制度」がスタートする。政府は3月3日、食品表示法の施行日を4月1日と閣議決定した。これを受けて消費者庁では4月1日から機能性表示食品の届け出を受け付ける方針を明らかにした。「最速で5月末に機能性表示食品の流通が始まる可能性がある」(食品表示企画課)としている。3月2日には同制度を利用するための手引きとなる「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン(案)」も公表された。同案では成分や製品について臨床試験を行っていない、錠剤や粉末、ドリンクなどであっても、一定の条件をクリアすれば、機能性表示が行えることなどが新たに明らかになった。業界内の期待感はさらに高まっている。

 いよいよ4月から機能性表示食品制度が始まる。必要書類をそろえて、届出し、消費者庁による形式的審査をパスすれば、「サプリメント形状の加工食品」「その他の加工食品」「生鮮食品」「農産物」に機能性を表示できるようになる。
 消費者庁は3月2日、都内で「食品表示基準及び新たな機能性表示制度に係る説明会」を開催した。同日午前中、説明会の開始前に消費者庁のウェブサイト上で、同説明会配布資料として「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン(案)」が公開された。
 説明会では、消費者庁食品表示企画課の塩澤信良食品表示調査官が登壇し、ガイドライン案の内容について解説を行った。塩澤調査官は「今回あくまで『案』としてガイドラインを出してはいるが、近日中に公開される正式版ガイドラインの内容が大きく変わることはない。正式版は今回の『案』に、レイアウトの変更や『てにをは』の修正を施す程度と考えている」と説明した。
 本紙が3月4日に消費者庁に正式なガイドラインの公表について聞いたところ、「食品表示基準の内閣府令が出た後になる。制度の施行前、近日中としか言えない」(塩澤調査官)と述べた。
 今回示されたガイドライン案では届け出にあたって、多数の書類を提出しなければならない旨が定められている。この点について識者からは、「『海外の制度を参考にする』という前提があったはずだが海外の制度とはかけ離れたものだ」と指摘する声も上がっている。
 「すでに動いている米国など諸外国の機能性表示制度をみると、届け出に必要な書類は単純で少ない。その代わりに、ガイドラインのような制度を解説する資料は細かい部分の扱いまで記載されており、かなりボリュームがある」(在日米国商工会議所ダイエタリーサプリメント小委員会天ヶ瀬晴信委員長)と言う。「一方で、今回の日本の機能性表示食品制度は、届け出が複雑な反面、ガイドライン自体は50ページ程度と少ない。企業の自己判断に委ねられる部分も多く、制度を利用したくても踏み出せない事業者が多いのではないか」(同)と考察している。


「錠剤・粉末・液剤等」は臨床が不要の場合も

 新制度を利用して「サプリメント形状の加工食品」で機能性表示をするためには、「最終製品を用いた臨床試験」もしくは、「臨床試験を必須とする研究レビュー(※)」による科学的根拠の検証が必要となる。つまり、いずれにせよ、少なくとも一報以上の臨床試験の論文が必要になる。一方、生鮮食品やその他の加工食品では、「臨床試験又は観察研究」の研究レビュー対象の論文となっており、臨床試験は必ずしも必要とはされていない。
 では「サプリメント形状の加工食品」の定義は何か。これについてもガイドライン案で明らかになった。その中には救済措置ともとれる記載があることがわかった。
 ガイドライン案では、「サプリメント形状の加工食品」を「錠剤・カプセル剤・粉末・液剤等」と定義した。ただ「錠剤・粉末・液剤等については社会通念上、サプリメントとして認識されずに食されているものもあることから、当該食品の一日当たりの摂取目安量に鑑み、過剰摂取が通常考えにくく、健康被害の発生の恐れのない合理的な理由のある食品についてはサプリメント形状の加工食品ではなく、その他加工食品として取り扱ってよいものとする」としている。
 つまり健康食品でも、過剰摂取などによる健康被害の恐れがないことを合理的に説明することができれば「臨床試験を行っていない成分・製品でも機能性表示ができる」可能性があるのだ。何をもって「合理的な理由」とするかは「届け出者の判断に委ねる」(塩澤調査官)としている。
 新制度利用のハードルは、この規定により大きく下がることになる。ただ有識者からは懸念の声も上がっている。前述の天ケ瀬氏は「明らかに健康食品である商品が、その他加工食品と名乗るようなことが乱発すれば、制度の見直しの際に締め付けが厳しくなる可能性もある」と指摘する。

(続きは本紙 3月5日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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