ダイレクトメール(DM)や新聞広告、ネット広告全般が「勧誘」とみなされ、契約の取り消しの対象となる─。消費者委員会では、消費者契約法の改正に向けて、このような議論が行われている。経団連をはじめ日本通信販売協会や日本訪問販売協会とする業界団体、大手EC企業はこの案に反対を表明している。消費者委員会でどんな論点が議論されていて、改正されればどのような影響があるのか。消費者庁による報告書や調査会の出席委員からの提案事例をもとに、検証していく。
15年夏までに首相あてに報告
消費者契約法とは、通販や訪販を規制する特定商取引法と異なり、実店舗、無店舗問わず、全ての商取引行為が対象となる法律だ。同法が施行した01年当時のルールでは対応できない事例が出てきているとし、改正の必要性が高まっていた。
消費者庁では14年3月に「消費者契約法の運用状況に関する検討会」を開催。「不特定多数を対象とする新聞広告、ネット広告、配布するチラシ、商品パンフレットなどもいわゆる『勧誘』にあたるのではないか」といった意見が報告書に盛り込まれた。
この報告書をもとに、14年11月からは、消費者委員会に専門調査会を設置。今年3月まで委員から改正試案やプレゼンテーションが行われ、8月までに首相あてに議論の内容を報告する考えだ。
「誇大広告」を根拠に契約取消可能に?
改正議論の主な論点は6つだ=別表。テレビやラジオ、新聞、雑誌といった広告を「勧誘」とみなすかどうかに注目が集まっている。「あらゆる広告が契約締結の意志に働きかけている」とし、契約の取り消しに加え、場合によっては損害賠償請求権も付与するべきだとされている。
「勧誘」とみなされれば、ダイレクトメール(DM)や商品パンフレット、ネット広告を使う通販・訪販業界への影響は必至。ウソや誇大広告と認定されれば、契約の取り消しが可能となるからだ。
ある通販関係者は「ネット広告によるマーケティング手法は日進月歩で変化している。こうした技術力の向上の芽を摘むことにつながる」と反対する。特に、安倍政権が掲げる成長戦略に水を差すようなことになり兼ねないとの声もあがる。
現在行われている調査会では具体的にどのような意見が出ているのか。早稲田大学大学院法務研究科教授の後藤巻則座長代理はネット広告について「消費者の意思形成に与える影響は大きい」と発言。「不当表示は景表法で規制されているが、民事規定がない」と、消費者被害を救済できない状態にある点を指摘した。
また、独自の改正試案を提出した日本弁護士連合会(日弁連)は先の広告が「契約締結の意思形成に直接働きかけていることが多い」とした上で、「勧誘の要件を見直す必要がある」と主張している。
また、企業が持つ商品やサービスに関する情報をすべて伝える必要があるとする「情報提供義務の義務化」も検討。現行法では、企業が消費者に提供するべき情報を伝える「努力義務」に留まっている。消費者庁では「消費者と事業者との間に情報の質や量、交渉力に格差がある」と指摘。「義務」に格上げすることで、契約の取り消しの根拠にしようと議論されている。
通販・訪販業界は一斉に反対
消費者契約法は、特商法などの個別法とは異なり、全ての業態に影響することから、今回の法律改正に経済界からは反対の声があがっている。1月30日に開催した第4回調査会では、経団連が日弁連の消費者契約法の改正試案について「概ね反対」する意向を表明。「経済活動に大きな影響がある」とした。
通販への打撃も大きい。店舗販売と異なり、広告をきっかけに売買契約の締結まで結びつけるため、広告を「勧誘」とみなし、契約の取り消しの根拠になれば、経営に大きな影響を与えかねないからだ。
(続きは本紙2月5日号で)
【消費者契約法改正】「誇大広告」に契約取消権を導入か/事業者団体は「反対」を表明
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