止まらぬ「海外マルチ被害」/改正特商法にも期待できず

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 国民生活センターは6月15日、「海外マルチ事業者」による被害に関する相談が、直近の3年間で累計2000件となり、急拡大していると発表、注意喚起を行った。ただ、規制当局といえる消費者庁はこの問題に対し、終始〝および腰〟ともいわれかねない姿勢を示し続けている。消費者団体や消費者問題に詳しい弁護士も、この問題に対する関心は相対的に低く、クレジット決済の返金による「水際対策」ぐらいしか対処法が見つかっていないのが現状だ。ネットワークビジネス(NB)の主宰企業については、悪質海外マルチがグループ内でまん延するおそれがあるため、危機感を強めるケースが増えている。主宰会社には自主的な対策が求められている。


■SNSが起爆剤に

 急拡大しているとされるのが、「海外マルチ」による被害だ。(1)海外で法人登記を行っている(2)会員制度やサービス提供も、形式的とはいえウェブサイト上で行っている(3)「旅行サービス」や「カジノの会員権」など、形のない役務を商材としていることが多いーーーなどの特徴があるという。
 「海外マルチ」に関して、パイオネット(PIO―NET)に寄せられた相談件数は、16年度だけで800件。14~16年の3年間の合計だと2000件にも上る。「海外事業者によるマルチ被害がここ数年で急拡大している。これまでの投資話のような、『実態がない詐欺被害』とは様相が異なる」(国セン相談情報部相談第2課・小池輝明主事)と話す。
 ただ、「海外マルチ」の被害拡大に対して、消費者庁は行政処分におよび腰だ。「そもそも連鎖販売の要件にあたるのか、慎重に検討する必要がある」(消費者庁取引対策課・落合英紀専門官)と言う。「連鎖販売」として認められた場合、クーリング・オフが認められることになるが、「返金に応じない事業者から返金を求めるには、消費者が海外の裁判所に訴える必要がある」(同)と言う。
 改正特商法が12月1日に施行されるが、「海外マルチ」の被害防止には効果が期待できそうにない。「所在不明の違反事業者への対応」という項目についても、改正特商法では新たな規定が設けられたが、消費者庁では「あくまで国内を念頭に置いた規定だ」(同)と話す。親会社など「密接関係者」に対する立入検査の拡大についても、「資本関係を証明しなければならず、(海外の法人に対して適用することは)非常に難しいだろう」(同)と話す。

(続きは、「日本流通産業新聞」6月29日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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