無店舗水素関連市場の販売動向/水素バッシングの影響大きく/高額品はレンタル需要が活況

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 通信販売や訪問販売、ネットワークビジネス(NB)など無店舗販売業界で、「水素水」を取り扱う企業が逆風にさらされている。16年は、国民生活センターが「水素水」に関する2度の注意喚起を行った。17年3月には、水素関連商材を扱う3社が消費者庁から、景品表示法に基づく措置命令を一斉に受けている。これに端を発してネガティブ報道が相次いだ。すでに一部のメーカーでは、取引先との商談がキャンセルになるなど影響が出始めているようだ。その半面、水素と酸素の混合気体の吸引機器や風呂用の製品の開発など、体感型の製品の市場投入が活発化。NB業界では、高額品を販売する手段をレンタルに切り替えて活路を見出そうとする企業もある。業態別の販売動向を探った。 


《家庭訪販・職域販売》日本トリムは業績に直撃

 日本トリムは、国センによる注意喚起の影響が業績を直撃した。主力の「電解水素水整水器」の販売が低下したことから、17年3月期連結売上高の予想を下方修正した。その中でもOEMは順調に推移していることを踏まえ、「『水素水』の大きなブームは再び訪れる。販売効率は徐々に回復していくだろう」(森澤社長)とみる。年内には家庭用の新製品を発売する予定だ。「新製品は当社の透析事業の技術を応用した画期的なものとなる」(森澤社長)と自信を示す。
 フジ医療器(本社大阪府)は今年2月に、携帯できる水素水生成器「プレミアム水素ジェネレーター」を市場に投入した。価格を2万円台に抑えることで新たな顧客との接点作りにつなげたい考えだ。
 ゼンケン(本社東京都)は、レンタルでの形で自社の浄水器の利用者を獲得していく。生協や通販企業などの提携先に浄水器のチラシを同梱してもらい、申し込みがあれば水道会社が設置とメンテナンスを行う。
 4月現在までに、累計で約150万台を出荷するなど手応えを感じている。


《ネットワークビジネス》「レンタル」で接点づくり
 NB業界では水素に対する期待感は依然として高い。飲料用の水素水生成器から、水素と酸素の混合気体を発生する機器、〝水素バス〟をコンセプトとした風呂用の機器などが相次いで投入されている。水素水は効果・効能をうたうことが難しいことから、風呂などの「体感」を前面に押し出すことで組織拡大につなげている。
 YOSA(本社大阪府)は4月1日、レンタル事業を開始した。6カ月プランと2年プランの2種類を用意。既存会員だけではなく、まずは試してみたいという人のニーズに応えた。
 オーエイチエスジャパン(本社福島県)は16年8月に水素吸入器「H2 PREMIUM(プレミアム)3」を投入して新規参入した。吸引タイプの製品を発売するメーカーから発売が相次いでおり、NB業界では、飲料用のニーズに加えて、コミュニケーションを活用した体感型の製品の需要拡大に期待を寄せている。

《売・EC》国センの発表の影響で逆風
 水素水を通販展開する企業は、新規顧客の獲得に苦戦している。
 パウチ容器入りの水素水を販売する、協和(本社東京都)は、「主に会員向けに販売しているためリピート率は高いが、新規獲得のペースは鈍化している」(相田克行フラコ販促チーム長)と話す。
 同じくパウチ入りの水素水を販売し、新規顧客の獲得に苦戦している通販企業は多いようだ。

《宅配(ウォーターサーバー)》
 近年、水宅配業界の収益をけん引してきた要素の一つが、水素関連商材の人気だった。トーエルやナックでは、16年4―12月期(第3四半期)においても水素商材が好調に推移し、増収や増益につなげている。
 ただ、「顧客数が伸び悩んでいる」という声も少なくない。業界全体を見渡すと暗雲が漂い始めているといえそうだ。

■水素に関する研究も進む
 行政が注視しているということは、水素水に対する消費者の期待が高まっているとも受け止められる。販売会社やメーカーは大学などの研究機関と共同による研究を進めている。
 日本トリムは水素水のエビデンス取得に力を入れている。帯広畜産大学臨床獣医学研究部門との共同研究チームが3月に研究成果をまとめた。
 アクアバンク(本社大阪府)は、水素に対する研究を推し進めるため、大学との研究体制を強化する。
 NBのJSIX(本社東京都)は、エイジングケアに対する研究も進めている。16年12月、ハワイに米国財団法人「国際アンチエイジング研究所」を設立。エビデンス取得に努め、会員に対してエイジングケアに関する正しい知識を広げている。
 無店舗販売業界では、過去にも有力な製品が発売されるたびに、さまざまな批判を乗り越えてきた。水素水市場は、今も有望であることには間違いない。市場の健全な発展には、早期に研究が進み、エビデンスが増えることに加え、販売会社のコンプライアンス強化が求められそうだ。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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