〈大手出版社通販〉 〝読者以外〟の顧客獲得へ/対象媒体の拡大、リアル展開も

  • 定期購読する
  • 業界データ購入
  • デジタル版で読む

 新規顧客の獲得に向け、大手出版社が「雑誌」を活用した施策を活発化させている。集英社はECサイトの実店舗を開設している。小学館は昨年から通販の対象媒体を増やすことで新たな客層へのアプローチを推進。新潮社やハースト婦人画報社は外部媒体も活用して売り上げ拡大を狙う。雑誌自体の売り上げが落ち込んでいるほか、見込み客の獲得が一巡している現状を打破したい考えだ。メディアミックス戦略に切り替えることで、結果的に雑誌へのリーチ数を伸ばしている企業もある。

【見込み客獲得が一巡 】

 大手出版各社が通販事業の新規顧客獲得に向けた動きを加速させている背景には、通販ページを連載している雑誌の売り上げが伸び悩み、一番の見込み客である雑誌の読者の獲得が一巡してしまったことがある。
 集英社が運営する女性向けファッションのECサイト「フラッグショップ」の17年5月期の売り上げは前期比10%増の60億円を計画している。07年の開設から右肩上がりに成長を続け、「毎年30%増のペースで推移してきた」(ブランド事業部ダイレクトマーケティング室)。今期は伸長率が下がる見通しだ。
 小学館が運営する、雑誌「DIME」「BE―PAL」「サライ」などと連動した通販事業「大人の逸品」も「この5~6年で売り上げは倍増」(廣田晋室長、Webメディア・通販事業室)したが、16年2月期の売り上げは前期から微減の約15億円だった。
 「週刊新潮」で世界の逸品を紹介する通販ページ「優越感具現化カタログ」を連載している新潮社の16年1月~12月の通販売り上げは前期比4・1%増の1億2500万円だった。ただ、「週刊新潮」の発行部数は約30万部と減少傾向にある。12年以降、それまで5000万円ほどだった売り上げが2倍以上に増加したこともあるが、「雑誌経由の売り上げはここ2年ほど伸び悩んでいる」(ウェブ事業室)と言う。

【雑誌知名度を活用 】

 そのような状況の中、各社は自社媒体の活用を強化しながら、既存顧客とは異なる層へのアプローチを進めている。
 集英社は2月23日にECサイト開設10周年を迎える。それを機にサイトの認知度を一気に高めたい考えだ。4月から本格展開する新たな通販カタログ「LaVivant」では休眠顧客の掘り起こしを進めるという。40代半ば~50代半ばの女性を対象にした雑誌「エクラ」の読者はもともと高額商品を購入する割合が高いなど優良顧客が多かった。ただ、サイト開設から10年が経ち、当初からの顧客と現在の「エクラ」が対象とする層が乖離してきたため、離れていく顧客も少なくなかったという。さらに上の年代層を対象にした媒体として「LaVivant」を活用する。

(続きは「日本流通産業新聞」1月26日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

Page Topへ