通販・訪販各社/シニア向けサービスが充実/御用聞き、対面強化で囲い込みへ

  • 定期購読する
  • 業界データ購入
  • デジタル版で読む

 通販・訪販・食品宅配といった無店舗販売各社がシニア向けのサービスを充実させている。食品宅配のコープこうべ(本部兵庫県)は今年4月から、御用聞きサービス「くらしのサポート相談係」を開始。75歳のシニアの組合員を定期的に訪問し、専門のコンシェルジュが買い物から食事の宅配、電化製品の購入まで幅広くサポートする。ダスキンでは今年3月までに、埼玉・和光市で、シニア向けの課題解決に向けた実証実験に参加。オイシックスは移動販売を手掛ける、とくし丸(本社徳島県)を買収し、ECではアプローチが難しいシニア市場に進出した。シニア市場が拡大する中で、各社は顧客獲得を狙い知恵を絞っている。


 訪販最大手のダスキンは、15年3月に策定した「中期経営方針2015」の中で、高齢化社会への対応策を盛り込んだ。15年4月に社内に「ライフケア開発本部」を新設。「高齢化社会の到来を見据え、人の生涯を事業テーマと捉えて、あらゆる年代あらゆる場面で求められる要望に応えられる体制を構築する」(広報室)と説明している。
 16年1〜3月まで、埼玉・和光市と提携。官民連携協定に基づく高齢者向け生活支援サービスを検証した。和光市内に「わこう暮らしの生き活きサービス」を設置。ダスキンの社員が窓口となり、シニアが抱える課題を聞き、課題解決につなげてきた。自社で解決できない課題については行政や他社を紹介したという。
 今後は、こうした検証を踏まえ、高齢者向け生活支援サービスのメニュー開発や介護サービスと認知症ケアを中心としたホームインステッド事業の積極展開につなげる。
 主力の家庭訪販事業においては、顧客が高齢化しているという現状を踏まえ、販売員が顧客宅に訪問した際に、困りごとをヒアリングし、課題解決につなげる。また、他の自治体でも和光市で実施したような窓口の設置を進める。


【「御用聞き」でシニアを戸別訪問】
 生協大手のコープこうべでは、75歳以上のシニア組合員へのサービスを充実させる。専門スタッフが高齢の組合員宅を個別訪問し、家電や家具について職員がタブレット端末を使って提案する「在宅便利ショッピング」を進化させる。15年3月期にシニア向けサービス充実の一環として、組合員の困りごとを聞く「くらしの相談係」を16店舗に配置。宅配では、各配送センターに「くらしの相談係り」(電気専従コンシェルジュ)を前期よりも20人増やし、43人体制に強化した。
 ウェブサイト「コープの在宅便利ショッピング」に家電や家具、補聴器など約1000品目を揃える。組合員からの要請があれば商品知識の研修を受けたコンシェルジュが10インチのタブレット端末を持参して訪問する。組合員向けのチラシに載せきれない商品を紹介したり、詳しい使い方を説明するなどのサポートを行ってきた。
 新サービスは、コンシェルジュ1人当たり400件の組合員を担当し、個別訪問している。「くらしのお役立ちガイドブック」でコンシェルジュが組合員が抱える課題をヒアリングし、あてはまるサービスがあれば、担当部署に振り分ける。
 17年3月期は、つえや歩行器などを掲載した「介護用品」のカタログを新たに発行。「配置薬」の企業と組み、必要な組合員の紹介を始める。「子宮頸がん検診キット」の開発も検討しており、シニアだけではなく、幅広い層の課題解決を目指す。

(続きは、「日本流通産業新聞」6月9日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

Page Topへ