国内NB企業/アジアをターゲットに進出が活発化/現地の事情、ノウハウ踏まえた展開が鍵

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世界の地域別売り上げ比率

世界の地域別売り上げ比率

国内NB企業各社アジアをターゲットにNB企業進出現地の事情、ノウハウを踏まえた展開がカギ(表1)
 台湾や韓国、タイといったアジアに進出する日本国内のネットワークビジネス(NB)企業が増えている。百貨店やECでは、インバウンドや「越境ビジネス」が活発化。海外市場に乗り出すこうした流れはNB業界にも広がっている。ただ、過去には海外進出後に事業に失敗し、撤退を余儀なくされたNB企業も少なくない。どのような点に注意し、NBが越境ビジネスを成功させればいいのか。NBの海外展開に詳しい識者の話をもとにポイントを探ってみる。


アジアに進出が相次ぐ
 国内NB主宰企業がアジアを中心に海外進出を活発化させている。中国を中心とした訪日外国人が増え続ける中、百貨店や量販店といった小売業界ではインバウンド消費で新たな市場を獲得。ネット通販業界でも、「メード・イン・ジャパン」の強みを生かし、香港や上海、台湾などへ越境ビジネスに乗り出す例も目立っている。こうした背景の中で、NB業界でも、中堅・新設企業を中心に、新たな販路としてアジア市場に進出しようと試みる企業も出始めてきた。
 現在、進出が目立つのがアジアだ。訪問販売世界連盟(WFDSA)によると、NBを主体とするダイレクトセリングの世界の地域別売上高構成比は「アジア・パシフィック」が44・6%、「米国」が36・9%となっている。国別の売上高でみると、米国が最も多いが、アジア全体のシェアが大きく、NBでアジアが有望な市場であることがデータからも分かる。
 アジアを中心にNBを展開するJ―SIX(ジェイ・シックス、本社東京都、菅原淳司社長)は国内で事業を開始する前から、タイ、シンガポールで事業を展開しており、17年5月期にグローバル売上高200億円の達成を見込む。
 サンクスアイ(本社熊本県、藤原誠社長)は15年12月に台湾で正式開業した企業。海外事業を手掛ける親会社のサンクスアイ グローバル プライベート リミテッド(本社シンガポール、藤原誠社長)を通じて、15年4月に世界123カ国・地域へ一斉にプレマーケティングを開始している。20年にグローバル売上高500億円を掲げた中期事業計画の目標達成に向けて、積極的に海外進出を図る。

現地人材と接触を

 過去にもアジアに進出する国内NB企業は多かったが、撤退した企業は少なくない。海外進出に積極的ではないNB経営者からは「まずは国内のマーケットを獲得してから進出したい」といった慎重論も根強い。
 こうした中で、東南アジアへの進出を積極的に支援する、YKC・システムコンサルティング(本社東京都)の藤野正樹社長は、「海外に打って出れば国内NB企業は成功できる潜在能力を持っている」と強調する。ただし「進出する際にはノウハウが必要で、相当の準備をしないと成功は難しい」とも付け加える。
 藤野氏によると、海外進出に必要なのは現地における「人脈」。海外でNBを開業する場合、業界団体への加盟や行政への届け出が必要だったり、商品を流通させるための許可が必要となる。これらの許諾は人の手によって行われることもあり、「スムーズな手続きのためにはキーマンへのアクセスが必要だ」と話す。
 これを踏まえ、まずはバーチャルオフィスを構え、個人輸入による展開を提案する。
 さらに「通訳」の存在も重要だ。「主宰企業のトップの考えをしっかり共有し、意思決定できる人材を海外事業の責任者に据えることが必要」(藤野氏)と指摘する。実際にコンサルティングを手掛ける企業は、現地に日本人責任者を配置し、腰を据えて取り組んでいるという。現地の会員の信頼を得ることに成功し、組織を順調に拡大しているケースが増えてきた。
 YKCでは、クライアントを対象としたビジネスセミナーを開催している。15年9月には、アジアのNB主宰企業と日本国内のメーカーをマッチングするイベントも開催。16年4月にはクライアント向けの「台湾ツアー」も企画し、海外事業に関心の高い国内企業を支援している。


続きは「日本流通産業新聞」1月21日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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