東京都/高齢者被害防止策に本腰/福祉や配送業者と連携で情報収集

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東京都が高齢者の消費者被害防止に本腰を入れ始めた。都内の市区町村が取り組んでいる「高齢者見守りネットワーク」を強化するほか、高齢者と接する地域包括支援センターといった福祉部門との連携を推進する。早期に高齢者に関する情報を得ることで、消費者被害の未然防止につなげていくのが狙いだ。生協やヤマト運輸の協力を得て、配達の際に被害防止の旨を盛り込んだチラシを6万9000世帯分配布する事業も期間限定で実施している。14年度の高齢者相談も過去最高更新を続ける中で、高齢者の消費者被害を食い止めたい考えだ。

 都が高齢者に対する消費者被害の防止に力を入れるのは、都が定義する60歳以上の高齢者に関する消費生活相談の増加に歯止めがかからないからだ。14年度に都内の消費生活センターに寄せられた高齢者による相談件数は3万9286件で過去最多を更新。6年連続で3万件を超え、4万件に迫っている。
 こうした状況について、消費者行政の方向性を議論する「東京都消費生活対策審議会」で討議。池本誠司弁護士を部会長とする部会を設置し、今夏から計4回の部会を経て、12月18日に開催の審議会総会で決議される見通しだ。
 10月の審議会で示された中間とりまとめによると、市区町村が取り組んでいる消費者被害を未然に防ぐための「見守りネットワーク」を構築する自治体は多いものの、見守りネットワークが、自治体によって福祉部門と消費者部門との連携に大きな差があることも分かったという。
 これを受け、市区町村への支援を実施する。都消費生活総合センターでは、相談のある高齢者が繰り返し被害を受ける恐れがある場合に、居住区の市区町村の地域包括支援センターへ連絡。見守り要請を行うなど連携を強化する。14年までに都内で200件以上で実施しているものの、市区町村でも対応に差異があるといった課題が指摘されている。
 16年4月に施行される改正消費者安全法では、見守り活動を円滑に実施するための「消費者安全確保地域協議会」を組織できるとされている。同法では、本人の同意がなくても個人情報の共有が可能となるため、より効果的な情報の共有が期待できるという。
 また、各家庭を個別に訪問するヤマト運輸や生協などの事業者と組み、悪質商法に関する情報や消費生活センターの役割などの情報を盛り込んだチラシの配布では、現在までに都内約7万世帯に向けて配布した。ただ、都の担当者はチラシによる「効果測定は難しい」と話している。さらに、継続的に実施するためには、インセンティブが必要となるため課題も多い。
 個人情報の取り扱いなどに課題も多いことから、消費生活部門と福祉部門が連携しても、情報のやり取りにどのくらいの成果が出るかは不透明だ。一方で、企業側は高齢者に対する契約体制をより慎重になる必要がある。販売員だけの現場判断に任せるだけではなく、第三者による契約内容の確認といった対策も必要になってきそうだ。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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