【景品表示法に基づく法的措置】 執行件数が激減/上半期は消費者庁2件、都道府県0件

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景品表示法に基づく執行件数が激減している。2013年度(13年4月~14年3月)に109件あった法的措置件数(措置命令と指示の合計)は、14年度に33件に減少。15年度の上半期(15年4月~9月)の法的措置件数は、消費者庁発足後最低の2件にとどまった。都道府県による処分に至っては、今年に入って、まだ1件も行われていない。業界の健全化の証なのか、はたまた嵐の前の静けさか。背景を探ると、どうやら、執行件数激減の要因は、国と地方自治体で大きく異なることが分かってきた。

メニュー偽装の影響も

 消費者庁が発足した09年度以降の、景表法に基づく法的措置件数の推移=グラフ参照=を見ると、13年度に件数がピークを迎え、その後激減している様子が一目瞭然になっている。
 特に都道府県においては、11年度22件、12年度29件、13年度64件と増加した後、14年度3件、15年度上半期0件と一気に激減している。
 国の措置命令についても13年度の45件をピークに、14年度は30件に減少。15年度の上半期は2件しか処分が行われなかった。直近の11月10日に出された日本イルムス(本社東京都)に対する処分を加えても、今年度に入ってから7カ月余りの間の処分件数はたったの3件。何か秘められた理由でもあるのかと勘繰りたくもなる。
 執行件数激減の背景を国や都道府県に取材してみたところ、異口同音に聞こえてきたのは「メニュー偽装の影響」という声だった。
 13年はホテルのレストランなどにおける食材偽装問題が大きくクローズアップされた年だった。景表法に基づく法的措置件数が13年度にピークを迎えているのは、この影響が大きい。北海道はこの年度に、景表法に基づき計36件の指示を行っているが、その全てがメニュー偽装に関するものだったという。
 北海道は「メニュー表示の問題が噴出した13年度の件数がそもそも特別だった」(消費者安全課)と話す。つまり、執行件数が激減しているのではなく、13年度の執行件数が特異的に多かったというわけだ。
 ただ、それだけでは、執行件数の激減を説明することはできない。14年度と15年度の執行件数は、メニュー偽装が露見する以前と比較しても、はるかに低水準で推移しているからだ。


異口同音に「健全化」

 執行件数の減少の理由としてもう一つ、景表法の執行を担当する多くの行政担当者から耳にしたのは「業界が健全化している」という話だった。
 埼玉県は「13年にはメニュー偽装問題が、その後には大手モールの二重価格問題が、それぞれクローズアップされた。この二つの問題で、景表法がニュースなどで取り上げられることが増えたことが、結果的に景表法の周知につながったのではないか」(消費生活課)と話す。
 東京都は、別の側面から、事業者の景表法に対する意識の高まりを説明する。「景表法に関しては、昨年12月施行の改正で、措置命令権限が都道府県にも与えられた。さらに来年5月までに施行が予定されている法改正では、課徴金も導入される。この二つの改正が抑止力となり、以前よりも悪質性の高い表示が減ってきているのではないか」(表示指導係)と話す。
 静岡県も「二つの法改正が事業者に影響を与えた可能性は十分ある。法改正に合わせて、景表法に関して事業者が講ずべき措置についてガイドラインが出されたことも事業者の意識の高まりにつながっているのかもしれない」(県民生活課)と話す。
 北海道も「感覚的には、表示する前に、『景表法上の問題はないか』などと事業者から事前問い合わせをいただくケースが増えている」と、事業者の意識の高まりを裏付ける。通販・訪販企業を顧問先に多数持つ千原曜弁護士も「景表法的な観点から表示の事前相談をしたいという顧問先は以前に比べて確実に増えている」と同様の傾向を感じている。
 消費者庁もほぼ同様の感想を持っているようだ。景表法を所管する表示対策課の真渕博課長は「メニュー偽装の問題を発端に、その後の法改正の議論まで含め、事業者の表示に対する意識が高まっているのは、個人的にも感じるところ。業界団体などから、景表法の関連の講演依頼をいただく機会も増えている」と話す。

続きは「日本流通産業新聞」11月19日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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