【人気ネットショップの裏方事情】連載第71回 生き残るためにも新サービス導入を

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加藤敏明氏

加藤敏明氏

 ネットショップは、ECサイト構築に関わるさまざまな支援サービスを組み込んでいる。支援サービスの仕組みは日々進化しており、決済をはじめ、レコメンド機能、アフィリエイトといったサービスなどはネットショップを運営する上で、欠かせないサービスとなっている。
 当社は98年にネット通販を開始し、今年で17年を迎える。立ち上げの翌年には楽天市場へ出店し、現在までにECを取り巻く環境は大きな変化を遂げている。
 そのEC業界の発展を支えているのが支援サービスを提供する企業の存在だ。自らの知識がないからといってこうした最新のテクノロジーを拒絶してしまうと、1年でできることが5年かかってしまう。分かりやすく表現すると、スマートフォン対応が喫緊の課題になっているにもかかわらず、いまだに最適化していないネットショップもある。支援企業が提供するサービスを上手に活用し、時代の流れに合わせて対応していかないと運営を継続していくことは難しくなるだろう。
 当社も一つ失敗談がある。楽天が5年前に始めた「あす楽」というサービスを採用しなかった。北海道から商品を配送しているので、翌日商品が届くという仕組みを想定できなかったからだ。
 ライバル社が、本州に物流拠点を置き、あす楽を活用することで、売り上げを伸ばしていた。こうした状況を踏まえ、当社でも3年後に物流拠点を本州に置いて、あす楽を活用することにした。北海道企業という思いも強く、本州にメーンの物流拠点を移することは、あまりにも不本意で涙が出るほど悔しい選択だった。
 しかし、冷静に振り返ってみると、その当時、先を見据えて、素早く意思決定できなかったことについては後悔している。


後払い決済を導入も素早く判断

 98年の立ち上げから前払い決済を採用してきた。売り上げが拡大するにつれて、未回収が増えていき、全体の0・2%を占めるまでに至った。
 コスト的に見合うだろうと考えていたが、未払い分を回収する社員の労力を考えると、解決しなければいけないと考えた。債権回収は当社の本業ではないと考え、2007年に専門企業に任せることに決めた。
 そして、今年7月から、後払い決済サービスを提供するキャッチボール(本社東京都)のサービスへの切り替えを実施し、債権回収業務を任せている。全体のコストは2割削減できている。
 こうしたシステムの変更はネットショップにとってメリットだけではない。万が一、うまく機能しなかった場合のことを想定しなければならない。
 そこで当社の場合は、移行期間を設け、従来型の仕組みと並行させた。もし不具合が生じても、すぐに撤退することを社内で共有することで、柔軟性を持たせて、社内業務の改善や更新を進める工夫を行っている。
 中小のネットショップにとって、システムを変更することは精神的にも負担が生じる。ただ、新しいサービスを積極的に取り入れていかないと、生き残りは難しくなるだろう。(月1回掲載)


〈筆者プロフィール〉
加藤 敏明(かとう・としあき)氏
 65年北海道厚岸生まれ。東京都立大学卒業後、建築事務所に勤務。ネットショップ「北国からの贈り物」を98年6月にオープン。楽天市場ショップオブザイヤー・ベスト店長賞を4度受賞。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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