【米国のEC 最新動向】〈連載第2回〉 最新技術の日本市場に与える影響

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「IRCE」会場のようす

「IRCE」会場のようす

前回は、世界最大級のEコマース(EC)イベント「IRCE」で開催されたセミナーについて解説しました。今回は、展示ブースで紹介された最新のECテクノロジーや事例のほか、それらが近い将来、日本のECに与える影響について解説します。
 展示会に出展した約600社のブースを回って気になったキーワードは三つありました。「オムニチャネルデータ分析」「パーソナライゼーション」「アマゾンを活用するソリューション」です。
 オムニチャネルで日本の2~3年先を進んでいる米国では、多くの小売業がネットと実店舗のデータの統合を終え、そのデータをいかに活用していくかというフェーズに入っています。そのことを顕著に感じたのが一つ目のキーワード「オムニチャネルデータ分析」です。
 展示会では、ネットや実店舗で接点を持った顧客の情報を、効率的に分析するテクノロジーが多数紹介されていました。例えば、「購入前/後」の行動情報やソーシャルで発信された情報を、個人の情報にひも付けて分析するというものです。
 具体的な事例では、米国で利用者が急増している「インスタグラム」に投稿された画像を解析し、多くの人に閲覧された投稿を、サイトに掲載する写真や情報に反映させる取り組みがありました。米国におけるデータ活用の進歩には驚かされました。
 二つ目のキーワードは「パーソナライゼーション」です。データの統合で得た大量の個人の特性情報をベースに、個々に最適化された情報を提供するテクノロジーが紹介されていました。
 代表的な使われ方としては、個人の特性に合ったメルマガを送ったり、顧客がサイトの検索窓で何らかの言葉を検索したときに、個人の特性に合った「おすすめ商品」を画像で表示するといったものがあります。こうした技術は米国の大手アパレル企業などで続々と導入されているそうです。
 最後のキーワードは「アマゾンを活用するソリューション」です。米国でもEC市場におけるアマゾンの存在感は年々拡大しており、最近では「アマゾンに対抗しよう」というより「アマゾンも活用しよう!」という流れになっているようです。
 そのような現状を受けて、アマゾンで売り上げを伸ばすために「価格」「レビュー」「画像」などを最適化するサービスが目立ちました。また、悪い評価が付いたときに通知するサービスや、膨大に投稿される評価を分析するサービスなども紹介されていました。
 日本においてもアマゾンの出品サービスを利用する企業が増えており、アマゾンをいかに活用するかという視点が注目を集めていくと思います。
 これまでの話をまとめると、オムニチャネル化の進化に伴い、大量の個人データから導き出した「関連性」「適合性」の高い情報を使って、顧客をファンにしていくテクノロジーが急速に広がっています。
 日本でも2~3年後にはオムニチャネル化に先行した企業が、大量のデータを戦略的に活用する事例が増えていくと予想できます。
 なお、本連載の内容も含め、7月30日(木)に米国視察報告「オムニチャネル近未来予測セミナー」を実施する予定です。


〈執筆者 略歴〉
株式会社いつも.
 事業推進部 部長兼チーフコンサルタント
 立川哲夫(たつかわ・てつお)

 年商100億の小売チェーンにおいて取締役兼営業企画部長を務めた後、東証1部上場の経営コンサルティング会社にて、事業再生・新規事業戦略案件に携わった。現在は株式会社いつも.にて、大手・中堅企業のEC事業参入、大手流通・メーカーのオムニチャネルプロジェクトにも参画。最近は、オムニチャネル先進事例を日本流に展開するため、積極的に海外での情報収集を行っている。今年1月、ニューヨークで開催の世界最大の小売業向け展示会に参加、6月には「IRCE」に参加した。

「IRCE」セミナー会場では「アマゾンを活用するソリューション」も示された

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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