【ECコンサルタントによる「勝手にECサイト分析」】□□45 ジャパンEコマースコンサルタント協会 笹本克特別講師〈ブルーミングスケープ「ブルーミングスケープ」〉/お客さまが喜ぶことは「正」

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「ブルーミングスケープ」のトップページ

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 福岡県の観葉植物と関連商品を販売する「ブルーミングスケープ」。98年9月にネット販売を開始した。まだパソコン通信とインターネットが混在していた時代である。
 検索サイトもヤフーが人の手で作った登録サイト「=リンク集」が主流であり、ネットショプやSEOという言葉さえなかった頃にこのショップを立ち上げた。
 当時の集客手段は主に相互リンクのお願いと各種の掲示板だった。
 「ブルーミングスケープ」は、このネットショップの黎明期から、現在でいうSNSの力に着目していた。そして活用したのが観葉植物に関しての「各種」掲示板である。
 植物の育て方について顧客同士でQ&Aが繰り広げられる掲示板のほか、現在では植物の物々交換を行う掲示板や、観葉植物の画像を投稿できる掲示板などがある。
 継続は力なりという言葉があるが、現在では植物の育て方のQ&Aだけでも1万7000ページ以上となっており、植物が好きなネットユーザーが情報を検索すると、「ブルーミングスケープ」の掲示板がヒットしたり、ヤフー質問箱などのQ&Aサイトの質問の回答として、「ここに詳しく載っています」と同社掲示板のURLが書き込まれるという図式だ。
 これが潜在ユーザーへの認知度向上と集客の大きな柱となっている。それと同時に、投稿や閲覧を目的として、「買わないときでも」同社の掲示板にやってくるCRM的要素も併せ持つのである。
 ネットの黎明期には、まだSNSの概念自体がなく、当然ながら売り上げなどへの貢献度も期待できるものではなかった。
 また安価で簡単に使える掲示板などもない時代に、「純粋に」お客さまを楽しませることを目的として、一定の資金を投じて「掲示板」を本格的に活用した先見の明は驚くべきことだ。
 同社の大塚社長は「今もどの程度売り上げに貢献しているのか分かりません」と話すが、お客さまが喜ぶことは「正」という当時の判断が現在の大きな資産となっていることは間違いない。これこそ商いの王道といえるのではないだろうか。


〈筆者プロフィール〉
ささもと・かつ
 全国各地で有名ネットショップを輩出。自治体・関連団体にもEC関連の講演や講師を務めている。DeNAやヤフーのショッピング事業部スタッフへのレクチャーや、ドリームゲートの起業講座のほか、上場企業から中小企業までコンサルサイトの累計は約600社に至る。多岐にわたる業種でのコンサルティング実績も豊富。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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