【テモナ 佐川隼人 代表取締役社長】東証マザーズ上場/多くの事業者のストックビジネス化に貢献

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佐川隼人 代表取締役社長

佐川隼人 代表取締役社長

 リピート通販システム「たまごリピート」やウェブ接客ツール「ヒキアゲール」を提供するテモナ(本社東京都、佐川隼人社長、(電)03―6635―6452)は4月6日、東証マザーズに新規上場した。08年10月の設立以来、リピート通販に特化した支援サービスを展開。定期購入モデルは事業者が安定した収益が得られるストックビジネスであると提唱、さまざまな商材に向けてビジネスモデルの提案を推し進めている。上場を機に、システムの進化とコンサルティングの強化を図るという佐川社長に話を聞いた。

■進化版「たまごリピート」提供へ

 ーーー株式を上場した狙いは。

 現在、「たまごリピート」の進化版となる「たまごリピートNext(ネクスト)」を開発しており、近く提供を開始できるめどが立った。上場によって調達した資金を、よりよいサービス作りと当社の強みであるコンサルティングのための人材獲得に投資しようと考えた。

 ーーー「たまごリピートNext」のターゲットは。

 「たまごリピート」の導入社は年商1億~10億円規模の化粧品・健康食品EC事業者が多いが、より広範囲の売り上げ規模の事業者に対して支援できるようにするため、「たまごリピートNext」を提供する。売り上げ規模が拡大するほどカスタマイズのニーズが高まるため、APIを公開して事業者が自らカスタマイズできるようにする。提供開始から約8年がたった「たまごリピート」をゼロから作り直して、リピート購入してもらうための仕組み作りを強化している。年商100億円以上の大規模事業者から、これからECを始める小規模事業者までが使えるシステムにしていく。

 ーーー長期的にはECに限らずリアル店舗の支援まで視野に入れていると聞いたが。

 例えば、町の牛乳配達店や学習塾、ジムなども定期購入モデルに該当する。そういう領域に進出することも中長期的な計画だ。リアルの領域にも、CRMのノウハウを十分に展開していけるよう、実績を蓄積している段階だ。

 ーーー支援対象となるEC事業者の商材の幅が拡大している。

 昨年、主に食品販売事業者をターゲットにしたサービス「たまごサブスクリプション」を開始した。食品は廃棄率が高いため、利益率が低いことが課題だ。定期顧客が付けば計画生産ができるため利益率が向上し、ストックビジネス化できる。定期購入にさまざまな事業者が参入したいと考えているが、ノウハウがないと難しいもの。食品などの商材は健康食品・化粧品に比べてノウハウや成功事例が少ないので、しっかりコンサルティングをしていくことが重要だと考えている。

 ーーー健康食品・化粧品以外の商材で定期購入モデルが拡大する余地は。

 米国のサブスクリプションコマース(定期購入)市場はこの5年で25兆円から50兆円になっていると聞く。日本でも食品やアパレルなどでサブスクリプションモデルは拡大している。米国に比べて遅れを取っているものの間違いなく今後も拡大していくと思う。広告費が高騰している今、EC事業者は利益確保が難しくなっている。利益率の向上にはLTVを伸ばすしかないので、あらゆる商材で定期購入の売り方は必要なビジネスモデルになっているのは間違いない。実際、「たまごリピート」の導入社も、この1年で健康食品・化粧品以外の事業者が2割以上を占めるようになった。

■定期購入の健全成長のため啓発

 ーーー「たまごリピート」だけでなく、「ヒキアゲール」も導入社の事業拡大に貢献している。

 顧客の購買行動やビッグデータを見ながらウェブサイトの出し方を工夫するだけでなく、定期配送が1週間前になったらバナーを出すこともできるようなリピート購入にこだわった機能になっている。今後もリピートに特化した形で機能を進化させていきたい。

 ーーーテモナの強みであるコンサルティングについても聞きたい。

 コンサル部隊の社員を多く抱えているが、上場によりさらに強化したいと考えている。また、従来から導入社を対象とした実践的なワークショップや、さまざまなEC事業者が参加できるセミナーなども頻繁に開催している。当社は世の中の不安定なフロービジネスを改善していくことがミッションと考えて経営している。ノウハウや手法を伝えていかないと市場は拡大しないため、セミナーやコンサルによる支援に力を入れている。1社でも多くの事業者がストックビジネス化に成功してもらうための支援を徹底したい。

 ーーーリピート通販がより消費者から利用されるようになるために、市場はどうあるべきと考えるか。

 最近、定期購入絡みのトラブルが増えているように感じている。定期購入は本来、事業者にとってはストックビジネス化でき、消費者にとっては利便性と安く買えるという経済合理性があり、双方にとってメリットのある売買方法だ。しかし、事業者が目先の利益ばかり求めて「3回目まで定期解約できない」や「定期解約は電話のみで受け付ける」としながら電話がつながらないなど問題のある運営をしてしまうと、消費者はほかの店でも二度と定期購入に手を出さなくなってしまい、市場規模の縮小が懸念される。こうした問題のある運営は全力で阻止したいと考えている。セミナーでもこうした話をして啓発している。当社は単純に機能を提供するだけの「システム屋」ではない。事業を成功させるためのノウハウ、情報、場の提供と、コンプライアンスの啓発にも引き続き力を入れていきたい。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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