【Eコマース業界地図「CRM編」 特集】

 EC事業者のCRM(顧客関係管理)に対する注目度が高まっている。顧客へのコミュニケーションチャネルはメールに加えて、コミュニケーションアプリ「LINE」を活用する事業者が増加。CRM施策の精度や効率を高めるための「CRMシステム」や「マーケティングオートメーション(MA)」を導入する企業も増えている。CRMに役立つサービスをECのウェブメディア「eccLab」と共同でまとめた。


《進むLINE活用》

■オイシックスも導入

 食品ECのオイシックスは、LINEをCRMに活用することで顧客満足度の向上を図っている。
 16年5月にLINEビジネスコネクトを導入。顧客に会員IDとLINEアカウントの連携を促すことで、定期購入商品の注文変更をLINEで受け付けている。
 定期購入商品は毎週、同社がコースや旬、購買履歴を基に、事前に食材を買い物かごに入れた形で顧客に提案。顧客は自分にとって必要な商品を入れ替えることができる。ただ、期限までに商品を変更しないとプリセットされた商品がそのまま届く仕組みとなっている。
 「大半のお客さまが毎週、商品の入れ替え手続きを行う。ただ、その案内をメールのみで送るとメッセージが埋もれてしまい、お客さまがうっかり手続きを忘れてしまう可能性があった。LINEを活用することで確実に案内を届けることができるようになった」(オイシックスEC事業本部PR室兼ユーザー・エクスペリエンス室・白石夏輝室長)と話す。
 ユーザーにとってもメリットが大きいサービスのため、LINE連携はスムーズに進んだという。16年10月にはフィードフォース(本社東京都、塚田耕司社長)が提供するソーシャルログインサービス「ソーシャルPLUS(プラス)」のLINEログインオプションを導入し、LINEアカウントで会員サービスにログインできる機能も実装した。
 利用メリットを増やしたことにより、会員IDとLINEアカウントを連携したユーザー数は右肩上がり。13万人以上いる定期会員の4~5割がLINE連携を実施した。スマホを主に利用する顧客に関しては、「7~8割はLINE連携している」(同)と言う。


■多岐にわたる活用法

 EC企業は大手企業向けの「LINE公式アカウント」や、廉価版の「LINE@」を活用し、自社のアカウントをLINE内に開設できる。自社アカウントを開設することで、「友だち」と呼ぶフォロワーに対して、メッセージやクーポンを配信することが可能だ。
 LINEを通して顧客セグメントごとのメッセージ配信などを行うためには、「LINEビジネスコネクト」を活用する必要がある。オイシックスは「LINEビジネスコネクト」に対応しているマーケティングオートメーションツール「Cross―Channel Marketing Platform(クロスチャネル・マーケティング・プラットフォーム)」を導入していたため、スムーズに定期購入会員向けのメッセージ配信が実現できた。
 さらに、「LINEビジネスコネクト」に加えて、LINEアカウントでECサイトなどにログインできる「LINEログイン」、LINEに登録されている個人情報をユーザーの同意の基で利用できる「プロフィール+」などの機能を使える「Official Web App(オフィシャルウェブアップ=OWA)」という仕組みもある。
 オイシックスはOWAに対応している「ソーシャルPLUS」を導入することで「LINEログイン」を実装できた。
 他にもLINE上で顧客サポートを実現できる「LINEカスタマーコネクト」などのサービスもある。アスクルの日用品ECサイト「LOHACO(ロハコ)」は昨年11月、同サービスを先行導入した。実際にLINEで個別対応した顧客の90%以上が満足する成果が出ている。

《乱立!CRMシステム》

■狙うはLTV最大化

 「CRMシステム」といってもそのサービスは幅広い。販促施策を自動化できる「マーケティングオートメーション」機能を備えているサービスも増えた。CRMシステムを導入するEC事業者が、システムに求めることも多様化している。
 ファンデーション「エクスボーテ」など化粧品や健康食品の企画開発・製造販売を手がけるマードゥレクス(本社東京都、藤原尚也社長)は、顧客のLTV(長期的にもたらす利益)を最大化するため、CRMシステム「カスタマーリングス」を導入した。
 「当社の商品は50品目近くあり、利用する人によって用途や期待することも異なる。これをいかに組み合わせながらレコメンドするかを考える必要がある。そのためには、CRMシステムを導入してしっかりやっていかなければと考えた」(藤原社長)と話す。
 藤原社長がCRMシステムに求める必須条件は大きく分けて3点あったという。
 「一つ目はお客さまが実際にどういう購入の仕方をしているのか、どういった動きをしているのかをデータとして把握すること。二つ目はデータを簡単に、かつ臨機応変に活用できること。三つ目が施策の効果を分析できる機能」(同)と話す。
 「カスタマーリング」を導入する決め手になったのは、「シンプルさ」だったという。
 「『カスタマーリングス』はデータをためた後、それをサービスに変えるところの速さが違う。さらに、運用者にとっての操作性もかなり重要なポイントだった」(同)と話す。
 カスタマーリングス導入後、戦略商品を核にした定期購入のリテンション施策やクロスセルの取り組みを実施している。
 LINE@を活用したCRMにも着手。16年10月にアカウントを開設し、1カ月半で2200人以上の「友だち」を集めた。同11月にはLINE@経由の売上高は180万円になった。今後はLINE連携が可能な「カスタマーリングス」で、多彩な施策を幅広いチャネルで実現していきたいという。


■通販特化型も

 CRMシステムは中小企業を対象とした手軽なサービスから、大企業向けの本格的なシステムまで幅広い。
 カートASP大手のGMOメイクショップが提供する「MakeRepeater(メイクリピーター)」は、セグメントごとのメール配信やステップメールなどを実施できる。メールマーケティングをこれから強化したいEC事業者が手軽に導入・運用できる点が特徴だ。
 イーグラントが提供する「うちでのこづち」は、通販・EC特化型のシステム。「カスタマーリングス」や「コアフォースワン」、「ヒキアゲール」なども通販・EC企業の導入実績が豊富だ。EC企業が求める詳細な顧客分析・分類に対応している。
 FIDが4月に提供を開始した「MOTENASU(モテナス)」も通販・EC企業向けのシステム。年商10億円以上の高度なCRMを求めるEC事業者をターゲットに、独自の機能を盛り込んだシステムとして提供している。
 フロムスクラッチが提供する「b→dash(ビーダッシュ)」は、CRMシステムの機能だけでなく、DMP(データマネジメントプラットフォーム)やBI(ビジネスインテリジェンス)などの機能も兼ね備えた統合型のシステムだ。他社のシステムなどと連携しなくても豊富な機能を迅速に活用できるという。

主要「CRMシステム/マーケティングオートメーション」比較表1

主要「CRMシステム/マーケティングオートメーション」比較表2

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

Page Topへ