”ユーザーの受け取りやすさを追求”
「ユーザーの受け取りやすさを追求」 ヤマト運輸(本社東京都、長尾裕社長、(電)03―3541―3411)は今年8月から、ECで購入した商品をコンビニエンスストアの店舗で受け取れるサービスを拡充した。従来、大手通販事業者に限定していたコンビニ受け取りサービスを、事業規模に関係なく無料で利用できるようにした。コンビニ受け取りの現状やサービス概要を、EC事業者や法人向けサービス開発を担当する、営業推進部・中西優プロジェクトマネージャーに聞いた。
■需要ある自宅以外での荷物受け取り
ーーーコンビニ受け取りサービスを始めて4、5年たちますが、コンビニを指定するユーザーの傾向はありますか。
「最近分かってきたのは、自宅以外で荷物を受け取りたいという方が、およそ何割くらい存在するかということが把握できるようになってきたことです。具体的な数字は控えますが、ECで商品を購入された方のうち、自宅以外で受け取りたいという方の比率が、かなりいらっしゃる印象です」
ーーーコンビニ受け取りサービスは、一部の大手通販事業者に限定していたと思いますが。
「昨年までは基本的に、大手通販事業者に使っていただけるサービスとして提供してきました。しかし、ユーザーからすれば、どこのネットショップで買ってもコンビニで受け取りたいというニーズはあります。そのような仕組みを構築して、今年8月からより広く使っていただけるようにしました。われわれとしては常に、荷物を受け取るユーザーの方が受け取りやすい環境を追求していきたいという思いがあります。そのような仕組みを、あらゆる通販事業者さまにも提供したいと考えています」
ーーー大手通販事業者に限定していたのは、何か事情があったのですか。
「システムの改修が非常に重く、大手の事業者さましか導入できなかったためです。ネットショップの購入フローの中に『コンビニを選ぶ』という導線を作らなければならず、自宅以外にコンビニを選ぶとなると地図が表示できるようにしなければなりません。その改修が負担になっていました」
■コンビニ受け取りの料金は取らない
ーーーEC事業者がコンビニ受け取りを導入するにあたり、費用はどのくらいですか。
「かかりません。ユーザーからコンビニ受け取りの利用料を取るかどうかは、各事業者さまの判断になりますが、われわれは通販事業者さまから料金はいただきません」
ーーー通販事業者から料金を取らないとなると、ヤマト運輸のメリットは。
「そこはよく聞かれることですが、『宅急便』はもともとCCを基本に開発して広めてきたため、どのように受け取りやすさを追求するかというユーザーの利便性を優先しています。コンビニ受け取りもその一環で、ヤマトとしてはサービスの向上と『宅急便』をより使っていただく機会が増えればと思います」
ーーー他の配送キャリアでは有料に設定しているところもありますよね。
「そこは各社それぞれの判断で行っていると思います。われわれとしては料金をいただいていないので、通販事業者さまから見れば導入しやすいのではないでしょうか。コンビニ受け取りの場合、一部制限(荷物の大きさは100サイズ〈3辺の合計が100センチ以内・重量は10キロ〉までで、クールは取り扱えない)はありますが、このサービスを広げていくことで、ユーザーは便利になるという確信を持っています」
ーーー国土交通省は昨年、宅配便を届けた際の不在率が約2割という数字を発表しましたが、この傾向は変わっていない印象ですか。
「平均するとそれくらいです。ただ、実際の再配達率は通販事業さまによってすごく違いがあります。やはり受け取りやすさや買いやすさを追求している通販事業者さまは明確に数字が違ってきます。われわれとしても、各通販事業者さまに対して〝コンビニ受け取りという選択肢をご用意いただくと、購入者のお客さまがより受け取りやすくなる〟と積極的にご提案していきたいと考えています」
【EC支援サービスマップシリーズ 「物流」】<インタビュー>”宅配最大手”ヤマト運輸 営業推進部プロジェクトマネージャー 中西優 氏
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