楽天EXPO講演要旨/三木谷氏「AIの開発進める」/店舗に有意義な技術サービス提供

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楽天EXPOで登壇した三木谷浩史社長

楽天EXPOで登壇した三木谷浩史社長

 楽天は7月11日、出店者向けの夏季のビジネスイベント「楽天EXPO」を大阪で開催した。大阪を皮切りに、東京、札幌、福岡でも開催していく。今年のテーマである「クオリティー」のもと、人気店舗によるセミナーや三木谷浩史社長の講演などを行った。三木谷社長は、楽天が現在、力を入れて開発を進めている人工知能(AI)について講演した。講演要旨を紹介する。


■出店者向け動画コンテンツを充実

 「楽天市場」は97年にサービスを開始した。全国の小さな店舗やブランドが持つ素晴らしい商品と、消費者を直接つなぐことができれば面白いことになると思い、6人の創業メンバーで立ち上げた。技術がいくら進歩しても、「楽天市場」の規模が大きくなっても、商売は人と人をつなぐものという思いは変わっていない。
 出店者に成功事例やノウハウなどを話してもらい、紙媒体にして出店者向けに毎月発行している冊子「楽天DREAM」があるが、動画の方がもっとリッチに、臨場感を持って伝えられると考え、このたび、動画コンテンツの「Rakuten DREAM ONLINE」を毎月配信することにした。
 ハートフルなストーリー、技術的な話題、規模別の成功事例などを紹介していき、店舗とのコミュニケーションをより密にしていきたい。


■グローバルイノベーションカンパニーに

 「楽天市場」の立ち上げ当初は、周りから「インターネットで物を売るのは無理だ」と言われていたが、楽天は現在、国内外を合わせて年間10兆円近いEC流通総額となっている。
 今までの楽天のスローガンは「世界一のインターネットサービス企業になる」というものだったが、つい先日、「グローバルイノベーションカンパニーになる」に変更した。AIなど先進的な技術を使って、店舗をエンパワーメントしていきたいと考えている。
 今後、AIが人間の代わりに一定のサービスを手掛けるようになれば、今までのサービスの再定義が始まっていくだろう。
 楽天グループのサービスや「楽天市場」の中でも、AIが動いている。AIの技術により自動運転や医療分野での進歩だけでなく、「楽天市場」の需要予測によるパーソナライゼーションも可能となる。
 ネットワークで膨大なデータや情報がつながり、コンピューターの考える力や改善力は、今後圧倒的なスピードで進化していくと思う。
 そこに向けて楽天は、世界的なレベルの技術を出店者に提供するため、世界からエンジニアを集めている。AIに関する技術者だけで100人以上を抱えている。
 ショッピングで最も関係のあるAIは画像認識だろう。楽天の画像認識の技術はすでに世界最高レベルになっていて、96.4%の確率でその商品を認識できるようになっている。多様な商品がある「楽天市場」で、買いたい商品にたどり着きやすい仕組みに寄与するだろう。
 楽天が出店者に提供するページ改善支援サービスもAIが行いつつある。このサービスは昨年9月から毎月100店舗に対して行っており、平均36%もコンバージョン率が改善している。


■競争力のある商売が可能に

 マーケティングにおいても、今までのような大まかなセグメンテーションではなく、一人一人に合わせたパーソナライゼーションの時代に入っている。楽天ブックスや一部のサービスでは始まっているが、どの商品を誰にどのぐらいの価格で提供すれば売れるという判断もある程度できるようになっている。
 この仕組みを出店者に提供し、商品の需要予測や、一人一人に違うクーポンを発行する販促などに生かしている。
 AIがコンシェルジュサービス、顧客対応、適切な商品レコメンデーションまで行う時代になると思う。楽天の基本的なコンセプトは「エンパワーメント」。出店者に有意義に使ってもらえるAIの開発を進めていきたい。
 AIをどのように活用していくかが出店者にとって重要なポイントだ。活用次第で大規模のリテーラーやネットショップに対しても十分に競争力のある商売ができると思う。
 今後もネットショッピングはますます多様化していくだろう。楽天はグローバルイノベーションカンパニーとして人工知能に先進的に取り組み、出店者にもアイデアを出してもらいながら、世界一バイタリティーがあふれ、感動が与えられるショッピングモールを出店者と一緒に構築していきたい。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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