家電・家具のEC事業者/配送費値上げに苦慮/10社以上の運送会社併用も

  • 定期購読する
  • 業界データ購入
  • デジタル版で読む
「ウルトラコンパクト布団」は通常の宅配便で配達している。

「ウルトラコンパクト布団」は通常の宅配便で配達している。

 家電や家具などの大型商品を取り扱うEC事業者が、運送会社による配送料の値上げ対策で苦慮している。商品価格の値上げを余儀なくされたり、大型商品の取り扱いを減らす事業者も少なくない。オフィス家具を販売するオフィスコム(本社東京都、高橋和也社長)は10社以上の運送会社を使い分けることにより、配送コストの上昇に対応しているという。


■商品価格に転嫁

 燃料費の高騰やドライバー不足の影響により、数年前から運送会社が配送料の値上げに踏み切っている。特に家具や家電など大型商品の値上げ率が大きく、大型商品を取り扱うEC事業者は送料値上げに伴うコスト対策に迫られている。
 家具のECサイトを運営するインテリアオフィスワン(本社埼玉県、加藤和浩社長)は、配送コストが上昇したため、商品価格を値上げした。今後も配送料の値上げが続くようであれば、さらに商品価格を引き上げざるを得ないとみている。
 同社はECサイトで表示している商品価格に配送料を含めている。配送委託先であるヤマトホームコンビニエンスとSGムービングが14年、インテリアオフィスワンの主力商品であるベッドの配送料を約3000円から約3600円に値上げした。
 インテリアオフィスワンは顧客離れを防ぐため価格を据え置き、送料の値上げ分を自社で負担した。これにより、同社が負担する配送コストは商品価格の約8%から約12%に上昇したという。
 値上げ分の配送コストを負担し続けることはできず、現在は商品価格を引き上げることで、以前の配送コスト比率にまで下げている。
 「運送会社から突然、『現在の料金では持っていけない。さらに配送料金を上げる』と言われる可能性もある」(阿比留亮副社長)とみている。運送会社の動向を注視しながら、急な値上げにも対応できる体制を構築していきたい考えだ。

 
■配送会社を使い分け

 オフィス家具を販売するオフィスコムは、自社配送と複数の配送会社を使い分けることにより、配送料値上げのリスクを分散させている。
 首都圏の顧客には自社で保有するトラック2台で配送。東京近郊からの注文が多数を占めているため、注文の3割は自社配送で賄っている。
 自社配送エリア外は10社以上の配送会社と提携している。委託している配送会社が料金を値上げするたびに見積もりを取り、安値を提示した配送会社に配送を依頼している。
 オフィス家具の設置を顧客から求められた際には、各配送会社から作業費用の見積もりを取り、委託先を決めている。「配送会社を分散させることで配送料金の値上げリスクを回避している」(EC事業部・増岡隆行氏)と話す。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

Page Topへ