日本ネット経済新聞はこのほど、EC事業者を対象にコスト意識調査を実施した。EC事業を手掛ける上で「最も負担に感じている費用」を選択式で聞いたところ、「広告宣伝費」と回答した企業が全体の30・3%を占めてトップだった。顧客獲得費用の上昇を要因に挙げた企業が目立つ。ECを取り巻く利益環境について自由記述で質問したところ、利益確保の見通しに悲観的な意見が散見されたほか、利益面でECの優位性が薄れているという指摘が複数の企業から挙がった。
CPAが悪化
コスト意識調査は11月、EC事業を手掛ける企業を対象にアンケート方式で実施した。有効回答数は33社。
EC事業で最も負担に感じている費用は、「広告宣伝費」が前回比0・3ポイント減の30・3%、「物流費」が同3・3ポイント減の27・3%、「システム費用」が同1・5ポイント増の18・2%となり、上位3項目で全体の75・8%を占めた。
「商品原価」「顧客対応費用」「代金回収費用」が各6・1%、「サイト制作・メンテナンス費用」は3・3%だった。
「広告宣伝費」と回答した理由として、「新規顧客獲得のコストが高騰している」(大手化粧品通販)など、CPAの悪化に言及する企業が目立った。
「(EC事業の)コストの中で大きな比重を占めている」(健康食品・化粧品のEC大手)といった意見や、「(広告の)費用対効果が見えにくい」(アパレルのEC大手)ことを理由に挙げた企業もあった。
「運賃が高止まり」
前回調査でトップだった「物流費」は僅差の2位だった。13年ごろから本格化した大手運送会社による送料の値上げは、現在もEC事業者の収益を圧迫している。
配送料は大手運送会社の要求を受け入れざるを得ないケースが多く、EC事業者の企業努力では削減できない。そのため、「自社のコストはギリギリまで下げているが(配送会社の)運賃は高止まりしたまま。ガソリン価格も下がっているのだから運賃を下げてほしい」(香水のEC会社)といった不満の声が挙がった。
また、「家具は商品サイズが大きく配送コストが高い」(家具メーカーのEC事業担当者)など、大型配送の運賃が上昇していることもEC事業者の負担になっているようだ。
最も負担に感じる費用として「システム費用」を選んだ企業の割合は年々上昇している。ECのトレンド変化が早まり、通販システムのカスタマイズの必要性が高まる中、「見た目は小規模な改修でも費用が膨らむ」(健康食品の通販会社)ことはEC事業者の悩みの種だ。
大手モールに出店しているネットショップからは、「モールの仕組みやルールが一方的に変更され、それに対応するためのシステムの入れ替えや更新費用が実にもったいない」(時計のネットショップ)といった不満が噴出。モール側の意向でシステム費用が値上がりすることへの不満も散見された。
(続きは日本ネット経済新聞 12月3日号で)
本紙調査最も負担に感じる費用/「広告費」が30%/顧客獲得費用の上昇で
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